酒合戦!
2017年10月20日 文責:川口
先日,本を読んでいて,ある文字に思わず目が留まりました。
それは,
「酒合戦」。
合戦と聞いて思い浮かぶのは,「雪合戦」と「紅白歌合戦」くらい。
「酒合戦」とは,なんと勇猛な響きでしょう。
では,その酒合戦とは?
平たく言うと,その昔催されていたという「大酒飲みコンテスト」のことです。
記録に残る最も古い酒合戦は,平安時代の911年。
宇多法皇の亭子院という,文人のサロンのようなところで催され
このときの優勝者は,賞として一匹の駿馬を賜ったとか。
今でいえば,賞品は新車でしょうか。
近世になると,江戸では酒合戦が盛んに行われていたようです。
灘や伊丹の銘酒が,廻船で江戸という一大消費地に集まっていたことや
民衆の暮らしにも余裕が生まれたことなどが,その要因のようです。
記録も残っていて,参加者の名前や住所,平らげた酒量などが載っています。
一例を挙げると…
・天満屋みよ女 天満屋五郎左衛門の妻。万寿無量盃をかたむけて酔った色もない。
「万寿無量盃」というのは盃の種類で,一升五合。換算すると,およそ2.7リットルです。
女性なのにすごいなぁと感心していたら,
・天満屋五郎左衛門 千住掃部宿の人 三,四升ばかり飲む。
その旦那は妻の倍以上…。
しかし,随分あっさりした記述だなぁと思っていると,
さらに別の記録には,「(酒量が)二升,三升位のものは記さない」とも。
つまり,3.6リットル,5.4リットル程度は記すに値しない,のです。
これぞ,まさに合戦…。
一方で,文人たちの集まりとあって,その肴はなかなか洗練されていたようです。
とある有名な酒合戦での肴は,
「からすみ,花塩,さざれ梅,うずらの焼き鳥,蟹,鯉こく,ぼたもち」など。
また,盃が空くと,芸妓さんが新たな盃をもってきてくれるという
ちょっと優雅な,わんこそばシステムを採用していたようです。
大盃を顔に近づける者がいる一方で,端の方に倒れ某を口から垂れ流す者,と
その挿し絵(版画)には,なかなかの修羅場も描かれていますが,
穏やかな世相であったことが十分伝わって,和みました。
あまり参戦したいとは思わないですが(笑)