ハーレム・スピークス
2013年11月27日 文責:川口
秋の古本祭で,ハーレム・スピークスという本を見つけました。
ニューヨークのハーレムについて,
そこに暮らす16名の語り部による
オムニバス形式のいわば「ハーレム論」です。
辻信一という,スローライフをテーマにした著書や活動で有名な
学者さんが20年ほど前に出した本で,
自分自身,ハーレムではなく著者に興味があって読み始めました。
自分は,一度だけニューヨークに行ったことがあります。
ハーレム=危険
というステレオタイプなイメージしかなく
近付くこともなかったのですが,
この本で,それはある意味正しくもあり,誤りだ
という気がしました。
住人の多くの共通認識として
「昔は活気があった」
「麻薬がハーレムを,黒人を駄目にした」
というのがあるようですが,
現実の荒廃ぶりの要因を
すべて外に押し付けている感じの人も中にはいます。
一方で,ハーレムに溢れる問題は
自分たちの「自己嫌悪」という病気の表れでしかない,
など,バッサリと断ち切っている人も少なくありません。
環境は環境でしかない,という指摘です。
穏やかな環境でぬくぬく育った自分としては
ハーレムという地域が抱える問題の根深さなどわかるはずもなく,
(しかも古本市で遭遇するまで無関心だったことがらに対して)
どうこう言う権利も意思もないですが,
すべての問題は「自己嫌悪」という病気の症状だ
という指摘には,思うところがありました。
別のハーレムの住人で,
元プロバスケットボール選手だった人の
子どもたちへのメッセージ。
できるだけ高く跳べ。
跳べぬように後ろから足を引っ張っているのは
自分自身だけなんだ。
さあ,もっと高く。
困難と向き合って,跳び越えた人の言葉なだけに
重みがあり,素敵だなと思いました。