今世界中がオリンピックに燃えていますが、もうすぐ、京都では山で燃やす行事「大文
字の送り火」が行われます。
送り火についての公式記録はなく、「いつ、だれが、何のために」始めたのかは、謎
のままになっているようです。
大文字の起源が研究されはじめたのは江戸時代初期からで、「平安時代初期の弘仁年
間(810〜824)に弘法大師が始めた」という説が代表的になるとのこと。
大文字の送り火が、なぜ「大」の字なのかも謎のままで、諸説としては、
(1)もともと大という字は、星をかたどったものであり、仏教でいう悪魔退治の五芳星の
意味があったのではないか。
(2)一年を通して位置の変わらぬ北極星(北辰)は神の化身とみなされており、その北極
星を象った大の字を、同じく動かぬ山に灯したのが、そもそもの大文字送り火の起源では
ないか。
(3)弘法大師は、大の字型に護摩壇を組んでいたところから、大の字にしたのではないか。
などがあります。
現在では、「大文字」、「妙法」、「船形」、「左大文字」、「鳥居形」の五山で執り行
われている送り火ですが、明治以前には、この他に「い」、「一」、「竹の先に鈴(竿に
鈴)」、「蛇」、「長刀」の合わせて十山で行われていたそうです。
明治になり急速に近代国家を目指した日本では、祖先の霊「大文字」や疫病神「祇園祭」
を迷信とし、明治初年から10年間、祇園祭と大文字を禁止。その後、再開はされましたが、
古式伝統に目を向けなくなっていた当時では、公的、私的な援助を受けるのが難しく、資
金難に陥った送り火は昭和初期(第二次世界大戦前)までに次々となくなり、現在の五山
になったということです。